初めてのサントリーカーブ

2017.7/26

 夜勤明けの仕事を終え、陽もすっかり高くなったある日。出発してすぐのサンダーバード車内でビールを一気に飲み干すと、途端に気を失ってしまった。本日は3月に関ケ原で見事に直前で陰られてしまったEF6627リベンジである。充当列車は奇しくも前回と同じく5074レ。山口県は幡生を未明に出発し、夜遅く東京ターミナルに到着するロングラン運用である。吹田出発は13時過ぎ。夜勤明けということと急がなくてもいいということで、列車で向かうことにした。目指す目的地は関西イチ、いや日本イチ有名な鉄道のカーブであろう山崎の大カーブ、通称「サントリーカーブ」である。恥ずかしながら初訪問。一体どんな場所であろうか? それを確かめてみたいという気持ちがこの場所を選んだのだった。しかしこのサントリーカーブ、線路は上りだと北東に向かって走っており、正午過ぎに通過する5074レは完全な逆光になってしまうのだが、運のいいことに今日に限って一日中曇りの予報である。「晴れずに曇っていてくれ」と、いつもとは反対の念を酒で身を清め、テツの神様に祈りをささげながら長い瞬きの末、気が付くと京都に到着していた。新快速は停まらないのでしばらく待って普通電車に乗り換え、目的地山崎に到着した。山崎駅は大幹線、東海道本線の京阪間の駅ということで、さぞ乗降客数の多そうな都市近郊駅を想像していたが、とんでもない、どこにでもありそうな地方駅の佇まいだった。





 というか今になって気が付いたのだが、昨日までは雨、今朝までは曇りの予報だったのだが、どういう訳か覆り、夏の暑い日差しが降り注いでいる。なんてこったい!一体現場ではどういうライティングになってしまうのか? サントリーカーブ初心者の自分は己の目で確かめる他なく、撮影地までの道のりを歩きだした。梅雨も明けたんだかそうでないのかよくわかっていないのだが、しかしながら今日は連日続いた35℃近い猛暑日も影を潜め、やけに涼しい。風も吹いている。これがいつもの撮影なら翻った「晴れ」も加えウキウキなのだが、今日ばかりは違う。踏切を渡り線路沿いを歩いていくとサントリー山崎蒸留所の前で見たことのある光景。大カーブの名にふさわしい弧を線路が描いている。でもここはいわゆるマンションバック。目指すはもうチョイ先のストレート終わりの首カックンのあたりである。駅から徒歩10分。現着してみると噂に聞いていたフェンスの高さが想像以上であり、また悩みのタネが増えてしまった。



 「ムムム・・・このフェンス、かなり手強い」 これでは持参のお手軽三脚で越すことはできない。フェンスにもたれて目いっぱい背伸びしてアングルをテストしてみると、何とかかろうじて障害無くレンズを被写体に向けることができそうだ。でもこの体勢で手持ち。なんだか成功する気が全くしない。そういえば先客は少し離れたところに5名ほどが固まっているのだが、当然のように全員バケモノのようなデカい三脚と脚立を持参している。そういう場所だったのか・・・。 「関東テツ、関西の名撮影地で爆死」 これだけは避けたかったので何度もリトライを繰り返し、ベストと思われるポジションを発見した。あとは気になるのは太陽の位置。トップライトなのか逆光なのか、やってくる旅客電車でテスト撮影をしてみた。



 どうなんだろう。ビミョウだな・・。ていうか貨物列車って外側の快速線通ってくるのだろうか?そんなことも知らないでやってきた関東テツ。現場の先人たちに聞くのも恥ずかしいので、どちらを通ってやって来ても即座に体勢を変えられるように何度もシュミレーションをし、あとは手持ちで本番を待つのみとなった。




逆光だけどまぁまぁかな。長大な5074レをケツまでゲット。
2017.7/26   東海道本線  島本〜山崎   EOS5D 100-400mm

 そんな訳でショボいながらも自分の中では満足し、帰ることにした。しかしその前にメシだ。せっかく福井を出たからにはラーメンだ。極論かもしれないが自分調査では、福井には旨いラーメン屋は皆無である。ラーメン文化が育まれなかった歴史的背景と、県民の嗜好が、ラーメン文化不毛の地にしてしまったからかも知れない。なので自分は県外に出かけたら必ず「ラーメン」だ。京都駅ビルの京都版「ラー博」に立ち寄り、その中から北海道系味噌の店を選ぶ。しばらく味わっていなかった普通の旨いラーメンの味とコシにむせび泣き、帰りの特急でもビールを開け、京都の街を後にしたのだった。